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ball 今起きている戦争って? ball

 最初から重苦しい話題となってしまって、ちょっと残念ですが、とにかく、今一番気になる話題なので、書くことにします。

 今起きている戦争って、いったいどこに原因があるのでしょうか。

 世界中で、テロリストと言われる人たちが、一般市民を無差別に殺しています。いったいどうしてなのでしょうか。

 「平和な日本にいるから、わからないんだ」「宗教とはそういう危険をはらんでいる」「日本人には、宗教というものがわからない」などと、変にうがった意見を言う人たちがたくさんいます。
 でも、それだけで済まされる問題でしょうか。日本人も、何人もの人が死んでいます。犠牲者となった人たちの遺族にとって、どうにもやりきれない問題だと思います。

 テロリストと言われる人たちは、いったい何で、罪のない一般の人々を、殺戮するのでしょうか。

 一番単純な理由は、殺しやすいからでしょう。本来の戦争であれば、その国家の戦闘員同士が戦うはずなのですが、憎しみの対象となっている国の軍事力が強大すぎて、正面から攻撃ができないのです。
 国家やそれに準ずるものとしての組織が、公の場面で欧米に争いを挑めば、簡単に滅ぼされてしまうでしょう。だから、丸腰の非戦闘員を大量殺戮するわけです。
 国家対国家としての戦争は、湾岸戦争で終わりを告げたと考えてもいいと思います。

 当時のイラクは、世界第2位の産油国として、巨大な経済力を持っていました。イラン・イラク戦争時にアメリカが支援したこともあって、どんどん軍備を拡張し、ペルシャ湾地域で最強の軍事大国になりました。
 そのイラクでさえ、アメリカを中心とした連合軍の前には、まったく為すすべもなく、簡単に敗戦してしまったわけです。

 さて、現在、世界中で活発に活動しているテロ組織は、どうして生まれたのでしょうか。

 この理由については、いろいろな書籍やホームページで紹介されています。
 たとえば、イランのイスラム革命とイラン・イラク戦争、ソ連のアフガニスタン侵攻に対する抵抗運動、湾岸戦争、おなじみの中東問題などがその原因とされています。
 しかし、こうした戦乱の背景には、欧米諜報機関の様々な謀略があり、それぞれの国家の利害が複雑にからんでいると見て間違いありません。

 アラブの国々は、西欧列強が植民地政策を敢行している間、いつも被支配層として、自由を奪われ続けました。
 現在では、植民地支配から脱却し、それぞれの国家が成立しています。近代国家として、国連からも承認されています。

 しかし、アラブの国々の国家という枠組みは、植民地支配の名残にすぎません。国境線はすべて、植民地支配の時代、西欧列強が勝手に都合のいいように決めたものです。アラブの人たちが自ら国家として成立させたものではありません。
 したがって、どの国家も、民族間の抗争を国家内に抱えています。イスラム教の宗派の違いも、争いの原因となっています。

 現在、世界中が注目するアフガニスタンも、民族や宗教、周辺諸国の利害などから、内戦状態がずっと続いているわけです。

 こんな状態では、アラブの国々が、発展するはずがありません。

 欧米諸国は、アラブの産油国から、石油を買っています。アラブ諸国には、莫大な資金が流れ込むわけです。そうした資金で産業を発展させ、国家の繁栄を築く、これが、誰もが考える理想的な姿なのですが、先ほどあげたいろいろな問題から、実際にはそうはなりません。
 産油国では、石油産業を中心に、経済的な発展をしていることは事実です。しかし、近代国家というのは、どうしても、貧富の差が生まれてしまいます。これが民族問題や宗教問題と絡んでくると、非常にややこしいことになってしまいます。
 結局はいつも、国家内での少数民族や弱者が、貧困を背負わされてしまうのです。この問題の解決は、一筋縄ではいきません。

 国家として経済が発展しても、貧困層は、いつまでたっても貧困のままだとしたら、どうなってしまうでしょう。
 国家そのものに対する反発が生まれてしまうでしょう。これが反政府運動です。しかし、単なる反政府運動では、国家に対して抵抗できません。簡単につぶされてしまいます。実際、アラブ諸国では、反政府運動を鎮圧するための大量虐殺弾圧行為が繰り返されてきました。

 近代国家というのは、対外的には自国の領土を守るため、また、内戦や内乱が起きた場合にはそれを鎮圧するために、軍隊を持っています。
 ついでにいえば、近代国家の延長としての国連は、国家間の争議が起きたときだけ、その間に入って仲裁の役目を果たします。内戦や内乱に対しては、国際法での取り決めもあって、通常は介入しません。内戦や内乱は、その国家の責任で、国家内で解決することが義務づけられているわけです。

 アラブ諸国の内戦や内乱では、多くのアラブ人が殺し合いを続けました。でも、どうして同じイスラム教徒なのに、こんなに憎しみ合わなければならないのでしょう。このように感じたアラブ人たちは、イスラムの教えを中心にして、現在の様々な矛盾を乗り越えようという運動を起こしました。これが「イスラム主義」です。

 よく聞かれる「イスラム原理主義」という名称は、イスラム主義を、キリスト教の原理主義と同じ様なものだととらえた欧米の呼び方です。しかし、イスラム主義というのは、キリスト教の原理主義とは違います。

 キリスト教原理主義は、簡単に言ってしまえば、「聖書に書いてあることはすべて正しい」という立場です。つまり、どんな場合でも、「聖書は無謬(間違いがないという意味)」であるという前提で解釈しなさいと言うことです。
 イスラム主義というのは、近代国家の枠組みとしての近代法ではなく、「イスラム律法を全面適用」すべきだとする立場です。西欧の作ったお仕着せの近代法よりも、イスラム本来の教えにしたがうべきだということなのです。

 このイスラム主義は、多くの国で、貧困層を中心に広まっています。欧米の国々がどんな謀略をしかけてきても、内戦や内乱が起こってしまっても、イスラム主義のもと、イスラム教徒が団結できると期待をかけているわけです。
 そのなかでもイランは、イスラム革命を実現し、独自の政治体制を持っています。イスラムの教えと民主主義制度の融合と考えればわかりやすいと思います。

 しかし、アラブ諸国の富裕層または支配層で近代化の恩恵を受けている人たちは、当然のことながら、イスラム革命が起こって欲しいとは思っていません。欧米も、宗教的自由の制限や、女性への差別問題等で、反対の立場をとっています。
 イスラム革命後に起きたイラン・イラク戦争の背景には、こうした問題があったわけです。

 かなり脱線してしまいました。本筋に戻りましょう。
 先ほどもお話ししたように、アラブの国々で続いている戦争や内戦、内乱には、秘密裡にまたは公に、必ずといっていいほど欧米諸国が介入しています。その主な介入方法は、軍事支援です。武器を供与したり、戦闘訓練を施したりしています。こうして、アラブの戦士たちは、近代兵器を手に入れ、近代戦法を身につけていきました。
 さらに、ソ連のアフガン侵攻のような、イスラムに対する侵略行為の場合、いろいろ国から、義勇兵たちが集まってきます。そして、一緒に戦ったイスラム戦士たちの間に、強い同胞意識が芽生えます。

 この国家を越えたイスラム戦士たちの結びつきとイスラム主義、さらには欧米の様々な謀略と軍事介入に対する反米・反西欧思想が結びついて、現在のテロ組織ができあがってしまったわけです。

 テロ組織にとって、欧米の言いなりになって、イスラム主義を受け入れずに、近代化の恩恵を受けている富裕層や支配層は、イスラムの裏切り者となります。したがって、攻撃対象になります。
 しかし、やはり、イスラム世界を近代国家の枠組みに引き込み、実質支配しているのは、欧米です。特に、世界の警察を自負しているアメリカが、中東問題でイスラエルよりの姿勢を崩さなかったことが、敵意の発端だと考えられます。パレスチナ難民は、アメリカが助けてくれることを願っていたのです。

 そして、湾岸戦争によって、アメリカに対する敵意は、決定的となってしまいました。中でも、イスラム聖地のあるサウジアラビアに、アメリカ軍が駐留し続けたことが一番の原因のようです。

 実際には、表には出てこない、もっともっと複雑な背景があるのでしょう。そうして、テロ組織は、世界最大最強の国家アメリカを攻撃対象と選んだわけです。

 アラブの人たちは、マスコミのインタビューに対して、必ずこういいます。
 「私たちはただ、放っておいて欲しいだけだ」
 この言葉には、アラブの人々の苦しみに満ちた歴史が込められているような気がします。

 テロは決して許されることではありません。イスラムの教えにもあるとおり、どんな理由があっても、非戦闘員を殺す、ましてや大量に虐殺などということは、あってはならないことです。
 ただ、テロ組織が生まれ、テロが発生してしまう様々な要因についても、考えてみる必要はありそうです。



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