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ball 神経症と不安障害について ball

 いろいろと忙しくて、久しぶりのコラムになってしまいました。
 それでも、念願だったデザインのリニューアルも、やっとある程度完成しました。
 これからは、どんどんコラムを充実させていきたいと思います。

 さて、今回のテーマは、「神経症」「不安障害」についてです。

 まず「神経症」の原因とされている「抑圧」からお話しさせていただきます。
 「抑圧」というのは、自分自身の心のなかで、自分自身が受け入れられない考え方や感情、記憶を否定することから始まります。

 たとえば、幼少の頃、大切な存在である親に、一生懸命行ったことを嘲笑されたり、わざとらしく失望のため息をつかれたりすれば、誰でもひどく傷つくと思います。

 そんなとき、親に見捨てられたと感じてしまうかもしれません。
 子供にとって、親に見捨てられたという事実は、とてもつらく悲しいものです。簡単に受け入れられるものではありません。
 言葉が充分に発達した大人であれば、親に見捨てられたという事実を正面から受け入れ、その耐えがたい状況を解消することもできます。
 たとえば、「今回は親に見捨てられるようなことをしてしまったが、すぐにほかのことで挽回できる」などと考えられれば、それで解消するはずです。

 ところが子供は、言葉が未発達なため、耐えがたい状況を解消するような思考ができません。さらに、子供にとって親の存在というのは、絶対そのものです。
 その親に見捨てられたという気持ちを持ち続けることは、至難の業でしょう。
 そんなことから、子供は、見捨てられてしまったという気持ちを、なかったこととして忘れようとします。これが「抑圧」の典型例です。

 しかし「抑圧」という方法は、自分自身の考え方や感情、記憶の一部を無視または否定することですから、どうしても精神的に不安定な状態になります。
 現実に起こった事実は、本来否定しようがありません。いくら無視したり否定したりしても、心の奥底では事実だとわかっているわけです。
 自分自身が、意識上の偽りの自分と、心の奥底に「抑圧」した現実の自分に別れてしまうと考えてもいいでしょう。その2つの自分は、もちろん矛盾し合っています。
 このような状態を、「葛藤」といいます。

 自分の心の中で「葛藤」が起こると、意識上は、原因不明の不安として感じられるようになります。

 この不安から逃れるためには、すべてを思い出し、親に見捨てられたというつらく悲しい事実に直面しなくてはなりません。
 しかし、それは、とても耐えがたいことでしょう。そのせいで、「抑圧」し続けることになってしまうのです。
 言い換えれば、親に見捨てられたという事実に直面して耐えがたい状況に陥るよりも、「抑圧」して「葛藤」の不安に悩まされる方を選ぶというわけです。

 いくら不安であっても、なにかほかのことに夢中になっているときには忘れることができますし、ほかのことで親に認められることもあるかもしれません。
 そうして、親に見捨てられたというつらく悲しい事実から、目をそらすわけです。

 「抑圧」された体験というのは、心の奥底にずっと残っています。
 そして、あるとき突然、心に傷を負ったときと同じような状況に置かれたとき、心の奥底で以前味わったつらく悲しい体験が、刺激されて暴れ出します。

 これは大変な状態です。過去のつらく悲しい体験が意識上に上ろうとするため、「抑圧」を強めなくてはなりません。「強い葛藤状態」に置かれるわけです。
 心の奥で「強い葛藤」が起こると、精神力がその「葛藤」に使い果たされてしまいます。

 「強い葛藤」は、意識上で強烈な不安として現れてきます。さらに、精神力が使い果たされているため、なにかに集中することもできません。
 このような状態が何度も起こり、日常生活に支障が出てきた場合を、一般的に「神経症」と呼びます。

 神経症の原因は、非常に多岐にわたります。
 一番ポピュラーなものは幼少期の不幸な体験ですが、強烈なストレスがかかった後に発症する「PTSD(外傷後ストレス障害)」などは、大人になってからの体験が主な原因です。
 しかし、同じストレスを体験しても、発症する人としない人がいます。やはり、発症の裏には、幼少期の不幸な体験があると思われます。
(神経症の原因につきましては、当サイトのメインコンテンツの1つである「サイストリー」の第1章で詳しく解説しています。ぜひご覧ください)

 「神経症」という名称は、「ノイローゼ」を日本語訳したものです。しかし、このままの名称では、「神経」そのものの病気だと勘違いする人も多いでしょう。
 「神経症」の原因は、とても複雑ですが、主なものは、先ほど挙げたような幼少期の不幸な体験、つまり「心因性」だと考えられます。
 それをハッキリさせるため、専門家のあいだで、精神医学用語の「不安障害」という名称に統一しようと言う動きが現れました。不安による精神的な障害というわけですね。

 しかし、「神経症」という名称が、あまりにも普及しているため、一般の人に説明する場合も考えて、専門家のなかでも、「神経症」という名称を使い続けた人たちもいました。

 心理学用語はそうでもないのですが、精神医学用語というのは、より明確な診断の基準を目指すため、コロコロと変わります。
 現在、もっとも権威のあるDSM(アメリカ精神医学会が発行する精神障害の診断・統計マニュアル、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorder)の内容も、版を重ねるごとに変わっています(現在は第4版で、略してDSM−IVと表記されます)。
 たとえば、「多重人格障害」「解離性同一性障害」となったり、「不安発作」「パニック障害」となったりします。
 人間の心のように、あまりにも複雑であいまいな対象を診断するのですから、仕方のないことかもしれません。

 こんな状態なので、DSMのマニュアルどおりに診断することの無意味さを訴える専門家も多く、精神的な病名については、しっかりした統一性がないような状態です。
 専門家によっては、軽い症状のときは「神経症」で、重くなった場合に「不安障害」と使い分けている人もいます。

 また、単なる診断上の分類よりも、治療方法の違いで分類する専門家もいます。ごちゃごちゃした精神医学上の診断よりも、患者の治療が第一だということです。
 心の病気というのは、単純な症状だけが出るわけではありません。
 明らかに「神経症」、つまり心因性だとわかっていても、うつ病の症状が出ることもあれば、統合失調症の症状が出ることもあります。あとから、本当のうつ病に移行することもありますし、実は統合失調症だったという場合だってあります。

 つまり、そのときどきでどんな治療が必要なのかさえハッキリすれば、それだけで充分なわけですね。
 たとえば、不安が強ければ「抗不安薬」、うつ状態がひどければ「抗うつ剤」、統合失調症の症状が出ている場合には、その症状に適応した薬を使うということです。
 これはこれで、患者の治療という面から見れば、理にかなっているわけです。

 「神経症」と同じ心因性で、不安ではなく恐怖感が強いものを、「恐怖症」と呼びますが、これも、「神経症」の一症状としてとらえる場合もありますし、別の分類にする場合もあります。「PTSD(外傷後ストレス障害)」も同様です。

 結局は、誰にでも理解でき、診断の基準となりやすい病名に統一しようという努力は続けられているのですが、どうしても、あいまいな部分が残ってしまっていると考えればいいと思います。

 心の病気は、目に見える体の病気とは、根本的に違います。そんな心の病気にとって、病名や呼び方は、あまり重用ではないのかもしれません。

 最後に、ご参考までに、「神経症」や「不安障害」の代表的な病名を、別名や古い病名、類型の病名などと関連づけて列記しておきましょう。
(たぶん間違ってないとは思いますが、関連づけは、あくまで著者の判断によるものです。専門家の方で、間違いを指摘してくださるのでしたら、ぜひお願いいたします)


神経症や不安障害の代表的な病名
・ 不安障害(不安神経症)
・ 強迫性障害(強迫神経症)
・ パニック障害(不安発作、過換気症候群、過呼吸症候群、広場恐怖)
・ 急性ストレス障害(ATSD)
・ 外傷後ストレス障害(PTSD)
・ 社会恐怖(社会恐怖障害、赤面症、対人恐怖症、スピーチ恐怖症など)
・ 心気障害(心気症、心気神経症、ヒポコンデリー)
・ 広場恐怖(広場恐怖症、パニック障害)
・ 特定の恐怖症(単一恐怖、高所恐怖症、閉所恐怖症など)
・ 身体表現性障害(身体化表現、転換性障害、ヒステリー、心臓神経症、メニエル症候群など)
・ 身体醜形障害(醜貌恐怖症など)
・ 解離性障害(解離性健忘、全健忘、解離性とん走、解離性昏迷、ヒステリー)
・ 解離性同一性障害(自己同一性障害、多重人格障害)
・ 離人症障害(離人症)
・ 摂食障害(過食症、拒食症)
・ 睡眠障害(不眠症)
・ テクノストレス(テクノ依存症、テクノ恐怖症)



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