Psystory

ball 第2節 サイストリー誕生 (日記の限界、ワープロソフトを使って自由な心を得る)



家庭に浸透したパソコン
 現在では、多くの人がさまざまな目的でパソコンを使っています。
 パソコンの価格が下がったことと、ほぼ世界統一規格となったウィンドウズ95の登場によって、パソコンがずっと身近になり、使いやすくなったためです。

 また、時を同じくして、インターネットという、世界規模のコンピュータ・ネットワークが、一般の人にも利用できるようになりました。

 こうした背景から、大きなパソコン・ブームが起き、それまでは、一部のマニアを除いてビジネス・ユース中心だったパソコンが、急速に家庭にも浸透し始めました。
 今では、多くの家庭にパソコンがあります。
 しかし、パソコンの優れた能力をそんなに生かし切っていないというのが現状ではないでしょうか。

 なかには、ブームに乗ってパソコンを買うには買ったけれど、使用目的がハッキリしないため、ほこりをかぶったままだという方もいるかもしれません。

 現在のパソコンは、一昔前のものと比べれば、はるかに使いやすくなっています。しかし、初心者が操作を覚えるまでには、やはり努力が必要です。
 ハッキリした使用目的がないままに使いこなそうと思っても、せいぜいゲームを楽しむくらいが関の山といったところです。

 ところが、そのパソコンを使って、自分自身の心を癒すこともできるのです。心身の病気の予防や、自由な心の獲得も可能になるのです。
 これほど素晴らしい使い方があるでしょうか。
 それを、これからお話ししていきたいと思います。

ワープロソフトで日記を
 前節でお話ししたように、日記は心理療法と同じ効果を持っています。
 しかし、日記帳にペンまたは鉛筆で記述する方法のままでは、よほど文章の才能に恵まれていないと、それほど大きな効果は期待できません。

 それでも、現代という時代には、どんな人でもきちんとしたストーリーを持った文章を作れる方法があります。それは、パソコンのワープロソフトを使うことです。

 ワープロソフトなら、気の済むまで何度でも文章を修正できます。したがって、ワープロソフトを使って日記をつければ、かなり大きな心理療法の効果が期待できるわけです。

 その方法について、簡単にお話ししましょう。
 まず、その日1日を振り返って、思い浮かんできた出来事を、どんどんワープロ画面に入力していきます。断片的なままでも構いません。
 とにかく、もうこれ以上思い浮かばないと感じるまで、どんどん入力を続けます。

 次に、入力した内容を読み返しながら、その日に起きたことを思い返します。
 そして、新たに思い浮かんできた出来事を書き加えたり、最初の内容を修正したり、時間の進行通りに並べ換えたりして文章を整えていきます。
 このとき、大脳辺縁系の断片的な記憶も、大脳新皮質の首尾一貫した記憶として再編されていきます。

 この作業を、もうこれ以上なにも思い浮かばないし、修正するところもない、と自分自身でハッキリと実感できるまで続けます。
 こうして、その日1日の出来事が、一つのまとまったストーリーとして、大脳新皮質に再編されるわけです。

 もちろん、つらい出来事を思い浮かべているときには、情動発生処理が起きるでしょう。
 しかし、ワープロ画面に向かってキーを打ち続けるという単純な作業なら、そんなに難しいことではないはずです。

 ワープロソフトの文書にはパスワードを設定することができます。
 日記帳で言えば、カギに当たるものです。このパスワードを設定することにより、前節でお話しした守られた安全な空間が成立します。

 つまり、ワープロが持つ電脳空間(サイバースペース)が、自分だけしか入ることのできない、完全な守られた安全な空間となるわけです。
 ワープロソフトを使った日記が、心理療法の効果を持つことは、これでご理解いただけたと思います。

日記では自由な心は得られない
 しかし、日記というのは、あくまでその日に起こったことを記述するだけです。そのため、期待できる効果は、心身の病気の予防といったところでしょう。

 もちろん、これだけでも素晴らしいことなのですが、自由な心の獲得までは不可能です。原因不明の怒りや恐怖、不安からは逃れられません。

 それでも、ワープロソフトを使った日記の心理療法としての効果は、確かなものです。
 この方法をもっと改良して、自由な心を獲得することはできないものでしょうか。それを考えるために、ここで一度、ワープロソフトを使った日記の、心理療法としての利点を整理してみましょう。

 まず、忙しい日常生活のなかで、不確定で細切れのような自由時間を、最大限利用できることが挙げられます。
 今までの日常生活をそのまま続けながら、心身の病気の予防ができるわけですから、大きな利点だと言えるでしょう。

 次に、一人きりで心の整理がつけられるということが挙げられます。
 なにかつらいことがあると、友人に話を聞いてもらったり、誰かを誘って酒を飲みに行ったりという人も多いと思います。
 しかし、そのような時間を取れるかどうかもわかりませんし、いつでも話し相手がいるとも限りません。
 相手も忙しい現代人なのですから、仕方のないことです。

 それを我慢できずに無理強いしたりすると、人間関係がこじれて後々面倒なことにもなりかねません。
 また、誰かに話を聞いてもらいたいのに、そのチャンスがなかなか得られないというような状態が続けば、ストレスの蓄積から、心身を病んでしまうかもしれません。

 三番目は、パスワード機能を使えば、誰にも読まれる心配がなくなるということです。

 日記帳では、カギがついていたとしても、あくまで象徴的なものにすぎません。誰かが無理にでも読もうと思えば、日記帳についているカギ程度なら、簡単に壊すことができるでしょう。
 結局は、カギが壊されていることで、誰かに読まれてしまったかどうかを確認できるという程度の意味しかないのです。

 それに比べてワープロソフトのパスワード機能は、強力なものです。本気でパスワードを破ろうと思ったら、大変な労力が必要となります。
 他人の秘密を暴く程度のことに、それだけの労力をかけるような人は、まずいないでしょう。

 最後に、もう一つ挙げましょう。ワープロソフトの文書として残しておけば、あとからでも何度でも修正できるし、ふたたびつらい体験をしたときに、すぐに参照できるということです。

自由な心を得るためには
 こうした利点を生かして、自由な心を得る方法について、じっくりと考えてみましょう。
 まず、自由な心を得るためには、前章で何度もお話ししたように、真実の歴史を紡ぎあげる必要があります。
 そのなかでも特に重要なのは、大脳辺縁系にある幼少期の不幸な体験の意識化です。

 しかし、幼少期の不幸な体験は、偽りの歴史に何重にも包まれている可能性が高いため、なかなかその姿を現しません。やはり、精神分析で行うように、一つ一つ偽りの歴史を、はがしていく必要があります。

 次に、偽りの歴史を存在の根拠としていた古い自分自身を、破壊しなければなりません。
 つまり、守られた安全な空間が必要になります。

 さて、このように真実の歴史を紡ぎあげる作業を見てくると、ワープロソフトを使った日記の方法論が、どうやら使えそうに思えてきます。

 パソコンのサイバー・スペースを守られた安全な空間として利用しながら、真実の歴史を日記のように記述していけば、うまくいくかもしれません。

 ワープロソフトなら何度でも修正ができます。
 したがって、偽りの歴史をどんどん記述していっても、前後のつじつまが合うように何度も修正していけば、やがては真実の歴史を紡ぎあげることができるのではないでしょうか。

 しかも、ワープロソフトを使った日記の利点が、ことごとく生かせるのです。
 たとえば、不確定で細切れのような自由時間を有効に使うことができますし、一人きりで真実の歴史を紡ぎあげるという作業ができるのです。

 もしこの方法が可能だとしたら、通常の心理療法のように、1週間に1時間という限定がなくなります。
 たとえ毎日1時間しかできなくても、1週間で7時間になります。
 さらに週末に数時間程度でも使うことができれば、1週間に10時間以上も心理療法を受けたのと同じ効果が得られるのです。
 もちろん、それ以上の時間を使うことも、そんなに難しいことではないでしょう。

 つまり、精神分析の方法論を使う心理療法の最大の欠点である治療期間の長期化の問題も、気にしなくて済むのです。

 時間だけではありません。心理療法を受けるための治療費の負担も、まったく必要なくなります。

パソコンを使って真実の歴史を紡ぐ
 この、パソコンのワープロソフトを使って真実の歴史を紡ぎあげていく方法を、「サイストリー」と名づけたいと思います。

 サイストリーは、 psystory と表記します。このままでは「サイストーリー」と発音したくなりますが、「サイストリー」と発音するのには、ちゃんと理由があります。

 サイストリーとは、「心の(psycho)」+「歴史(history)」から、私が作り上げた造語です。
 そのまま psychohistory としてもよかったのですが、アメリカで始まった新しい研究分野としての精神歴史学と同じ綴りになってしまいますし、また、語呂が悪いということもあって、短縮して psystory としました。

 こういう経緯があるので、「サイストーリー」ではなく、「サイストリー」と発音していただきたいのです。
 サイストリーの原理は、いたって簡単です。

 まずは、人生を振り返ってみて、思い出せる出来事を、どんどん記述していきます。それを時間の進行に合わせて並べかえ、つじつまが合うように何度も修正を加えながら、自分自身の真実の歴史を紡ぎあげていきます。

 実際には、パソコンのワープロ・ソフトを使って、一つの文書のなかに、すべてを記述していきます。
 現在のほとんどのパソコンには、ワープロ・ソフトが最初から入っているので、それを利用すればいいわけです。

 パソコンのワープロ・ソフトは、パソコンの持つ大容量の記憶装置と高速プロセッサーのおかげで、大きな文書でも簡単に扱うことができます。

 なかには、パソコンの操作に慣れていない人もいるかもしれません。
 しかし、もっとも使用頻度が高いワープロ・ソフトなら、すでに使える人も多いでしょう。使ったことのない人でも、すぐに使えるようになるはずです。






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