Psystory

ball 第2節 サイストリー記述 (パスワード設定、メモエリアの意味、最初の記述)



サイストリー記述の方法
 サイストリー記述について、お話しを始めましょう。
 サイストリーは、心と体の健康法としての心身の病気の予防と、自由な心の獲得のための方法論ですが、その神髄はサイストリー記述にあります。

 ただし、サイストリー記述と言っても、ここで改めてお話しするような特別なものはありません。基本的には、心に思い浮かんできた内容を、パソコンのワープロソフトを利用して、どんどん文章化していくだけのことです。

 ただし、どんなものにも、一番簡単で効率的な方法があるはずです。
 そう考えながら試行錯誤を続けた結果、一つの方法ができあがりました。それをここで、ご紹介したいと思います。
 まず最初は、左記の順序でサイストリー記述のための文書を作成してください。



1.パソコンを立ち上げワープロソフトを起動させる
 一番使い慣れているワープロソフトを使うことをおすすめします。
 初心者の方は、ワープロソフトを習得する気持ちで、挑んでいただきたいと思います。

 ワープロソフトは、サイストリー以外でも、今後、もっとも使用頻度が高いソフトとなるはずです。
 サイストリー記述を機に習得しておけば、後々とても役立つでしょう。

2.新規作成を選んで文書のスタイル(書式)をととのえる
 基本的に文書のスタイル(書式)は、なんでも構いません。
 サイストリー記述は、決して印刷されることがないため、画面上で一番見やすい状態に設定しておけばいいのです。

 もし、そういった設定が面倒に感じる場合、ワープロソフトを立ち上げたままの状態(初期設定のまま)で、サイストリー記述を始めても構いません。文書のスタイル(書式)は、あとからいくらでも修正ができるため、ある程度慣れてきたら、一番便利だと思う設定に変えればいいのです。

 私自身は、A4用紙横書きで、行内文字数40文字、1ページの行数30行で行いました。
 こうすると、1ページで1200文字となります。
 ページ数から、どの程度記述し終わったか、だいたい計算できるわけです。

3.文書名(ファイル名)をつける
 家族で1台のパソコンを共有している場合には、すぐに自分のサイストリー記述だとわかるように、工夫をしておいた方がいいと思います。

4.パスワードの設定を行う
 必ずパスワードの設定は行ってください。自分一人で占有しているパソコンであっても、いつ誰が読むかわかりません。
 もし、一度でも誰かに読まれてしまったら、今後のサイストリー実践の大きな障害となってしまいます。

 また、パスワードを忘れないように、どこかにメモしておく場合には、注意が必要です。
 パソコンの近くにそのメモが置いてあったりすれば、パスワードを設定した意味がなくなってしまうからです。



 こうしてできた文書の最初の1行目に、「メモ」と記述します。さらに、数行空けて「私の心の歴史」と記述します。

 この「メモ」と記述したあとの数行のエリアは、ある出来事を記述中に、ほかの出来事が思い出されてきた場合、その内容を簡単にメモしておくエリアです。

 サイストリー記述では、ある一つの出来事の記述を始めたら、思い出せる限りの内容をすべて記述しつくします。
 完全に記述しつくしてから、ほかの出来事の記述に移るようにします。

 もし、ある出来事の記述が中途半端なまま、ほかの出来事の記述に移ってしまうと、偽りの歴史を作る材料が残ってしまうことになります。
 そのため、後々になって混乱を招く危険があるのです。

メモエリアの目的
 しかし、せっかく思い出した出来事をメモしておかないと、今記述している出来事を記述し終わった頃には、すっかり忘れてしまうかもしれません。
 大脳辺縁系の記憶や、それに直結しているような記憶は、なにかの拍子に一部が思い出されたとしても、すぐに前頭前野が抑圧を強めるため、忘れてしまうことが多いと考えられるからです。

 一度忘れてしまうと、次に思い出せるのはいつになるのか、まったくわかりません。とても非効率です。 そうした時間的なロスを防ぐために、メモ・エリアを設けておくわけです。

 一番最初にメモ・エリアを置くのは、ワープロソフトが文書の先頭行にジャンプする機能を持っているからです。
 つまり、なにかの出来事を思い出したとき、すぐにメモができるように、先頭に置いたわけです。
 また、一つの出来事の記述が終わったときに、次に記述する出来事を参照するときにも、先頭にあった方が便利です。

 このメモ・エリアには、複数の出来事がメモされることもあります。
 そんな場合には、箇条書きにしておいて、次の記述を行うとき、参照しやすいようにしておきます。さらに、記述し終わった項目は、必ずそのたびごとに削除するようにします。

 さて、ここで、どうして一つの出来事を記述していると、ほかの出来事が思い出されるのか、簡単にお話ししておきましょう。

 実はこのことは、すでにお話ししたことと同じ理由によって起こります。

 第1章第2節のところで、ざわめきや雑踏の音を聞くと、とてもふつうの状態ではいられなくなってしまうという例を挙げました。

 さらにその原因として、2歳ですべり台から落ちて怪我をしたときのまわりのざわめき、5歳で迷子になったときの遊園地の雑踏の音、10歳でピアノの発表会で大失敗をしてしまったときの観客のざわめきが、危機的状況の記憶として大脳辺縁系にあるからだと、お話ししました。
 
 このような場合、たとえば5歳での迷子になったときの記述を行っていて、雑踏の音について思い出したとき、ほかの2歳のときと10歳のときの記憶も刺激されて、突然思い出されてくる可能性があります。

 つまり、複数の出来事の記憶のなかに同じような断片化された記憶がある場合、一つの出来事の記述を行っているときに、ほかの出来事の記憶も刺激されて、思い出される可能性があるわけです。

 メモ・エリアを作る一番の目的は、そうした大脳辺縁系の記憶の特性を利用して、なるべく効率的に、大脳辺縁系の記憶を意識化しようとすることにあります。

 メモ・エリアのあとには、「私の心の歴史」と記述しますが、これ以降は、すべてサイストリー記述のエリアとなります。ここに、思い出した出来事を、どんどん記述していきます。

 それでは、実際にどのように記述していくのか、また、記述の順番はどうしたらいいのか、より具体的なお話に入りたいと思います。

 まず最初は、一番最近に起きた苦しく悲しい出来事について、記述していきます。
 最近の出来事の記述なら、比較的記憶がハッキリしていますし、サイストリー記述に早く慣れるためにも、一番いい題材だと考えられるからです。

 たとえば、最近失恋したことがあると想定して、その失恋のサイストリー記述を行ってみましょう。
 その流れのなかで、サイストリー記述のイメージを理解していただきたいと思います。

記述例A (最初の記述)
メモ




私の心の歴史

 その日、恋人のA子と、いつもの喫茶店で待ち合わせをした。A子はさんざんたせたくせに、やっと来たかと思ったら、機嫌悪そうに私の前に座った。私も相当に頭に来ていた。

 二人とも、なかなか話し出さなかった。しばらくそうしていると、その気まずい雰囲気を破るように、A子が口を開いた。
「もう私たち終わりにしましょう」
 私はその言葉を聞いたとき、どうしていいのかわからなくなってしまった。頭が、すっかり混乱してしまったのだ。それでも辛うじて、言葉を絞り出した。
「ずいぶん勝手だな。さんざん待たせておいて、やっと来たと思ったら、いきなり別れようなんて」
 私のその言葉を、A子は完全に無視した。そうして、私を見下すようににらみつけた後、席を立った。
 私は、いったいなにが起きたのか、よく理解できずにいたようだ。相当に怒っていたはずだが、ハッキリとはわからない。呆けたようにA子の後ろ姿を見送った後、しばらくそこに座っていた。そうして、ぼんやりとA子がさっきまで座っていたイスを見つめ続けていた。

 私は、A子との恋が終わったことを知った。なぜか、A子のところに電話をする気にもならなかった。もうどうでもいいような気がした。

 このように、最初の記述では、あまり情動発生処理が起こらず、ハッキリと感情が表れてこないことが多いでしょう。どこか他人事のような、よそよそしささえ感じるかもしれません。

 これは、ある意味で仕方のないことだとも言えます。あまりに苦しく悲しい出来事の場合、偽りの歴史を作り上げてしまう可能性が高いからです。

偽りの歴史の特徴
 ふつう、失恋というものは、かなりの悲しさや寂しさ、怒り、絶望感などがともなうものです。
 しかし、この最初の記述では、ほとんど感情らしいものは表れていません。これこそが、偽りの歴史の特徴なのです。

 このように、偽りの歴史を記述した場合の一番の特徴は、あまり情動発生処理が起こらないことです。
 したがって、自分のサイストリー記述が偽りの歴史かどうか判断したいと思ったら、強い情動発生が起こったかどうかで判断できるわけです。

 それでも、偽りの歴史にすぎない最初の記述を何度も読み返していると、大脳辺縁系の記憶が刺激されてきて、たいていは、そのときの細かい情景が少しずつ思い出されてきます。

 そうして、最初の記述を修正していくうちには、強い情動発生処理も起き、感情があふれ出てきます。
 ただし、何度読み返しても、細かい情景がどうしても思い出せず、感情もあふれ出てこないときもあります。
 前頭前野がその出来事に対して、抑圧を強化している場合です。

 このような場合には、その出来事と同じような出来事が、ほかにもあったと考えられます。
 少し前に、メモ・エリアを設ける理由のところでもお話ししたように、大脳辺縁系の記憶には、同じような内容を持つ出来事を一つでも意識化すると、ほかの出来事も意識化されやすくなるという特徴があります。

 前頭前野はそのことを知っていて、同じような内容を持つ出来事の記憶を、すべて一緒に抑圧し続けようとするわけです。
 特に、今記述している出来事と比べて、はるかにひどい危機的状況の出来事のなかに同じような内容がある場合には、完全に記述が止まってしまうこともあります。

 こうした場合、そのひどい方の出来事を先に意識化しないと、記述が進まなくなる可能性が高いのです。
 したがって、数回読み返しても、記述に修正を加えるような新しい情景が思い出されない場合には、ほかの出来事の記述に移るようにします。
 そうしないと、いたずらに時間を浪費することになってしまいます。

 いずれは偽りの歴史を作る材料がなくなってきて、抑圧されていた部分も意識化されてくるはずです。そうなったとき、改めて修正を加えればいいでしょう。

 なかには、ある出来事の記述を中途半端なまま残しておくと、いざ修正しようと思っても、簡単には見つけ出せなくなってしまうのではないか、と心配される方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし、そんな場合には、ワープロソフトの検索機能をうまく使えば、簡単に探し出すことが可能です。

 さて、先ほどの記述例Aで、最初の記述を読み返しているうちに、細かい情景が思い出されてきて、最初の記述に修正が加えられた場合を想定してみましょう。

 その場合、情動発生処理が起き、さまざまな感情があふれ出てきます。それをさらに言葉として記述していくことによって、少しずつ真実の歴史が紡ぎあげられていきます。

 それでは、実際にどのように記述が修正されていくのか、見ていただくことにしましょう。






「サイストリー」 トップへ
  

前のページへ
次のページへ


著作権は、すべて著者にあります。無断転載・無断コピー等は、堅く禁止させていただきます。
Copyright (C) 2001-2014 Yuki Tachibana All Rights Reserved


produced byYuki Tachibana