Psystory

ball (第4節の続き) (より高度な記述のテクニック、バックアップ、専門家への相談)



11.病気や怪我の記憶は優先的に記述する
 誰でも幼少の頃には、病気になったり怪我をしたりした経験があるはずです。
 そのときの記憶は、助けてくれた人たちの記憶として、人生上の不幸を引き起こす原因になったり、そのほかのさまざまな恐怖や不安の原因になったりしている可能性が高いと考えられます。

 したがって、病気や怪我のときの記憶は、どんどん優先的に記述していくことが望ましいでしょう。
 こうした記憶の大部分は大脳辺縁系にあり、すぐには思い出せないかもしれません。
 しかし、一つを思い出すと、次から次へと思い浮かんでくるのも事実です。
 どんどん記述し、細かいところまで意識化していきましょう。



12.親への憎しみは徹底的に記述する
 親への反感や嫌悪、憎しみについて記述していると、親と過ごした楽しい想い出やかわいがってもらったときの記憶が浮かんできて、もうこんなことはやめようという気持ちになるときがあります。
 なぜか苦しくなったり、不安になったりして、親に対してこんな気持ちを持つのはよくないことだ、などと感じてくるわけです。

 しかし、その苦しみや不安は、前頭前野が再び抑圧をかけようとして、葛藤状態になっている証拠です。
 つまり、もう少しで、自分自身を苦しめ続けてきた大きな問題が現れてこようとしているのです。

 こんな場合には、「親に対して本当に感謝の気持ちを持つためには、親に対する反感や嫌悪、憎しみを意識化しなくてはならない」ということを、よく肝に銘じてください。そうして、徹底的に記述しつくすのです。

 特に、幼少期の親に対する反感や嫌悪、憎しみは、さまざまな心の問題の元凶になります。
 親が仕事で全然構ってくれなかったり、親自身が抱えている問題のせいで、子供に対して冷酷な態度を取り続けてしまったりすると、子供はいつも悲しさと寂しさを持ち続けることになってしまいます。
 そうして、親への反感や嫌悪、憎しみが醸成されていきます。

 このような状態が長く続けば、いずれは自己蔑視や自己否定につながっていきます。さらに、その自己蔑視や自己否定を抑圧してしまえば、心の不自由度が非常に高くなってしまいます。

 幼少期の親への反感や嫌悪、憎しみは、ふだんは抑圧されていて、なかなか意識化することが難しいかもしれません。それでも、親に対する現在の感情を細かく記述していくと、その端緒が見つかることもあります。

 また、人間関係で苦しんだ体験について細かく記述していくと、かつて親に対して同じような苦しみを感じたと気づくこともあります。
 さらに、現在、反感や嫌悪、憎しみを感じている人について細かく記述していくと、親に対する抑圧された感情に気づくこともあります。

 そういった方法を使って、親への反感や嫌悪、憎しみを、徹底的に記述していきましょう。



13.サイストリーの実践を始めたらメモを常に持ち歩く
 サイストリーを実践し始めると、大脳辺縁系の記憶が絶えず活性化されるようになります。
 そのため、ふつうの生活を続けていても、今まで忘れていた過去の記憶が、突然なにかの拍子に思い浮かぶようになります。

 しかし、そのまま放っておくと、前頭前野が抑圧を強め、すぐに忘れてしまいます。これでは、貴重な時間を有効に使うことができません。
 それを防ぐために、いつでもメモ帳を持ち歩くことをおすすめします。
 もし、それまで忘れていた過去の記憶が思い浮かんだら、忘れないうちにすぐにメモを取っておきましょう。

 それをサイストリー記述を行うとき、メモ・エリアに転記しておくようにすれば、とても効率的にサイストリー記述を進めることができます。



14.失恋の記憶はすべて記述する
 失恋というのは、生命の大原則の種の保存に関係してくるため、どんな場合でも危機的状況だと考えられます。それは、自分の方から相手を振った場合や、自然消滅した場合でも、変わりません。

 自分から相手を振ったように感じていたとしても、記述をしていくうちには、そうでないことがわかったりします。
 たとえば、相手が自分を嫌っていることに気づき、相手から別れ話を切り出されるのを恐れて、先手を打って振ったように見せかけただけかもしれません。

 自然消滅したように思える恋愛であっても、同様です。
 たとえば、当時の自分が、ほかに好きな人ができたのにも関わらず、その罪の意識から逃れるために、自然消滅したように見せかけただけかもしれません。

 このように、現在思い出せる失恋の記憶というのは、前頭前野が偽りの記憶として、大幅に修正もしくは削除している可能性が高いのです。
 失恋に関する出来事というのは、その後の人生に与える影響が大きいため、とにかくすべてを記述していくことが必要です。



15.記述の順番について
 たとえば、メモ・エリアに複数の項目が並んでいる場合、どれから記述していいか迷うことがあります。
 そんな場合には、そのなかで一番気になる項目から記述していきましょう。
 一番気になる項目というのは、それだけ自分自身の心の問題の核心に近いものだと考えられます。
 したがって、早く記述すればするほど、苦しみや悲しみから早く自由になれるのです。



16.記述の時間的配置について
 サイストリー記述がある程度進んでくると、各出来事の時間的配置に悩むことがあるかもしれません。たとえば、出来事Aは、出来事Bの前だったか後だったか、わからなくなってしまうというような場合です。
 特に、幼少期の記憶というのは、どうしてもあやふやになりがちです。出来事の順番がわからなくなってしまうこともあるでしょう。

 しかし、全然気にする必要はありません。
 出来事の順番がわからなくなるのは、いまだに偽りの歴史から抜けきっていないからです。サイストリー記述を進めていくうちには、いずれはハッキリするでしょう。

 そんなことに悩んでいると、結局は貴重な時間をムダに使うことになります。どんどんほかの出来事を記述していってください。



17.記述内容が重複しても気にしない
 サイストリー記述が進んでくると、同じ内容の記述が、いくつかの出来事のなかで重複するようになります。
 たとえば、前節でお話ししたB課長に関する記述は、記述例Bのなかにもかなりありますし、その後、B課長と初めて会ったときの第一印象の記述を行えば、そこにも同じような内容が記述されます。

 ある出来事の記述というのは、その出来事が起きた時点で自分自身がなにを感じ、なにを思っていたのか、それを記述していくことにほかなりません。したがって、その時点での過去の回想も、記述に含まれることになります。

 その過去の回想のなかから新たな記述項目が見つかれば、さらに過去にさかのぼって、回想したときと同じ内容を、より詳しく記述していくことになります。
 また、ある時点の出来事の記述をしていくうちに、それより後にも同じような出来事があったと思い出した場合も同様です。
 今度はその後の時点での回想で、やはり同じような内容を記述していくことになります。

 さらに、ある時点の出来事の記述で、自分の未来についてどう考えていたかを記述していくと、その後にも、同じような記述をすることが考えられます。特に将来の夢や希望についての記述は、何度も同じ内容が記述される可能性が高いと言えるでしょう。

 心の歴史とは、このように過去と未来が複雑に入り組んでいるものなのです。
 現在の気持ちを記述してみれば、そのことはすぐに理解できます。
 たとえば、過去のある時期はどうだったとか、過去はこうだったけど今はこうだとか、将来はこうありたいとか、今後なにをしたいとか、過去と未来がすぐに入り乱れてきます。

 したがって、心の歴史を記述する以上、記述内容の重複は当然起こりうることであり、気にする必要はまったくないのです。



18.罪の意識も記述する
 ここまではほとんど触れませんでしたが、罪の意識というものも、心を不自由にする大きな要因になります。
 たとえば、誰かを怪我させてしまったとか、誰かの心をひどく傷つけてしまった場合など、大きな心のしこりとして残る場合が多いものです。

 こうした出来事は、不可抗力や不注意によっても起こりますが、大脳辺縁系の記憶が原因となって起こる場合が多いことも事実です。

 大脳辺縁系が、なんらかの刺激を受けて不快の情動発生処理をすると、前頭前野の活性が落とされ、戦うか逃げるかの状態に陥ります。
 その状態が長く続いたり、いくつものストレス要因が同時に発生したりすると、前頭前野の活性が極端に落ち、自分自身をコントロールできなくなることがあります。

 そんなときに、誰かを傷つけてしまうようなことが起こりやすくなるわけです。
 どんな形にせよ、一度ストレスが発散されると、前頭前野の活性が戻ります。
 そうすると今度は、そんな行動を取ってしまった自分自身を責めるようになります。
 ちょうど不安の悪循環に陥ったあとと同じで、コントロールできなかった自分自身を、強く憎むようになってしまうのです。

 つまり、罪の意識というのは、コントロールできなかった自分自身に対する、強い自己蔑視と自己否定だと考えられるのです。
 この状態は、とてもつらいものです。やり場のないストレスが、慢性的に発生し続けるわけですから、また同じように誰かを傷つけてしまうかもしれません。そうなると完全に悪循環です。

 誰かを傷つけなくても、ストレスが自分自身に向かえば、心身を病んでしまうことになります。
 また、自己蔑視や自己否定が強い人は、不可抗力や不注意によって誰かを傷つけてしまった場合でも、自分自身を攻撃する度合いが高くなります。そうしてまた、自己蔑視や自己否定を強化してしまうのです。

 このような強い自己蔑視や自己否定は、意識し続けることが難しいため、どうしても抑圧されやすくなります。そうして、新たな偽りの歴史が作られ、以前にも増して、原因不明の怒りや不安、恐怖に苦しめられることになります。

 ある人を見ていると無性に腹が立つとか、ある人の行動や性格が絶対に許せないなどと感じる場合、罪の意識としての自己蔑視や自己否定の抑圧が考えられます。
 たぶんその人の行動や性格のなかに、罪を犯した自分自身と共通する部分があるのでしょう。そのせいで、抑圧された記憶を刺激され、強烈な怒りや憎しみを感じるのです。

 つまり、本来は自分自身に対する強烈な怒りや憎しみだったものを、ほかの人に対して感じてしまうということです。

 今までに「絶対に許せない」と感じた人がいたら、どんなところが許せないのか、詳しく記述することをおすすめします。そうすることで、抑圧された罪の意識としての自己蔑視や自己否定を意識化できるかもしれません。

 また、すぐに思い出せる罪の意識について細かく記述していくと、抑圧された罪の意識についても、思い出せることがあります。
 そうした方法で、抑圧された罪の意識をどんどん意識化していけば、きっと大きな心の自由が得られるでしょう。



19.必ずバックアップを取っておく
 サイストリー記述は、今後の自分自身の存在の根拠となる、非常に大切なものです。もし、パソコンの故障などで消えてしまうようなことがあれば、あきらめきれずに苦しみ続けることになってしまうでしょう。
 そういった悲劇を防ぐために、バックアップは絶対に必要です。

 また、サイストリー記述のように大切なデータは、一つだけではなく、複数のバックアップを取ることをおすすめします。

 バックアップの途中でパソコンの電源が落ちてしまえば、パソコン本体のハードディスク上のデータも、バックアップメディア上のデータも、同時に壊れてしまう可能性があるからです。

 バックアップの方法にはいろいろなものがありますが、参考のため、私が行っている方法をお話ししておきましょう。

 まず、2組のバックアップ用メディアを用意します(サイストリー記述の場合、すべて文字データなので、データとしては、かなり小さなものです)。

 そして、その2組のバックアップ用メディアを、交互に使ってバックアップを取っていくのです。こうすると、もしバックアップの途中でパソコンの電源が落ちたとしても、その1回前のバックアップは無傷で残ることになります。

 この方法なら、まず安心でしょう。



20.不安や苦痛が長く続くときは迷わず専門家に相談する
 サイストリーを実践中は、さまざまな情動が発生します。ときには強い不安に襲われたり、怒りや恐怖、悲しみを感じることもあります。
 そうした情動が、記述を続けても収まらずに長く続いたり、精神的な苦痛に絶えられないと感じたときには、迷わず精神科(神経科)や心療内科、心理カウンセラーなどの専門家に相談してください。

 サイストリーは、病気の治療ではありません。あくまで、通常の生活を不自由なく送れる健康な人が、心身の病気の予防と自由な心の獲得のために行うものです。
 したがって、なんらかの精神的または神経的な病気の兆候がある場合には、サイストリーの実践は危険です。

 特定の情動が長く続く場合や、精神的な苦痛に耐えられないと感じるような場合には、なんらかの治療が必要だと考えられます。もしかしたら、脳のどこかに病変があるのかもしれません。そんな場合、早期発見、早期治療が一番大切です。

 また、自覚症状がなくても、身近な人に精神科(神経科)や心療内科を受診することを勧められた場合には、素直に従った方がいいでしょう。
 精神的または神経的な病気の多くは自覚症状がないため、自分自身では気づかないことが多いからです。

 もし、自分が精神的または神経的な病気かもしれないと感じたり、そうした病気かどうか自分ではわからないと迷っている場合にも、一度受診することをおすすめします。

 病気だった場合には、早期発見や早期治療につながりますし、病気ではなかったとしても、精神科医(神経科医)や心療内科医にその旨をハッキリ告げられれば、大きな安心が手に入ります。

 なんらかの精神的または神経的な病気だと診断された場合には、サイストリー実践は、その病気が完全に治ってからにしてください。

 病気だと診断されて、心理療法(精神療法)を受けることになった場合には、少し注意が必要です。
 心理療法というのは、治療者とクライアントとのいい関係が、大きなウェイトを占めるからです。
 治療者と会ってみて、どうしても好きになれないとか、恐怖感に襲われるような場合には、素直にその旨を治療者に話したほうがいいでしょう。

 たいていは、ほかの治療者を紹介してくれるはずです。もし、そうしてくれない場合には、自分でほかの治療者を探した方がいいと思います。

 また、どんな病気の治療を受ける場合でも同じですが、なるべくたくさんの信頼できる情報を集めることが必要です。
 そうした情報を充分に活用したうえで、どの治療者にお願いするか、決めていくことが大切です。



 この節では、サイストリー実践上の注意事項を、20項目にまとめてみました。
 ここでお話しした内容については、サイストリー実践後も、何度も読み返していただきたいと思います。
 そうして、サイストリーを実践し続けていただけば、もっとも効率的に、心身の病気の予防と自由な心の獲得を達成していただけるでしょう。

 それでは次に、サイストリー実践の効果とサイストリー実践後の人生について、お話しすることにしましょう。






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