How to overcome depression
ball 向精神薬、抗うつ薬・抗うつ剤 ball



 うつ病の治療の基本は、「休養」「薬物療法」、それに「精神療法」です(「精神療法」につきましては、「精神療法1 (精神療法の種類と一般精神療法・簡易精神療法)」のページをご参照ください)。
 このページでは、そのうちの「薬物療法」、特に「向精神薬」「抗うつ薬」(抗うつ剤)について、くわしく説明していきたいと思います。

 うつ病などの心の病気で使われる薬は、「向精神薬」と呼ばれ、代表的なものに次の5種類があります。

ball 向精神薬の種類
抗うつ薬(抗うつ剤)
抗不安薬(精神安定剤、マイナー・トランキライザー)
睡眠薬
抗精神病薬(メジャー・トランキライザー)
抗てんかん薬
 「抗うつ薬」(抗うつ剤)は、うつ状態の改善のための薬で、うつ病治療の中心的存在です。
 「抗不安薬」は、「精神安定剤」の名称でよく知られる、不安や緊張を取り除く薬です。不安障害(神経症)やパニック障害、自律神経失調症の治療でよく使われます。
 「睡眠薬」は、名前どおり、睡眠を促す薬です。睡眠障害(不眠症)の治療で使われます。
 「抗精神病薬」は、「統合失調症」の治療に使われる薬です。
 「抗てんかん薬」は、名前どおり、てんかんの治療に使われます。

 さて、それでは、「抗うつ薬」(抗うつ剤)について、くわしく説明していきましょう(「抗うつ薬」以外の向精神薬は、「薬物療法2(抗不安薬、睡眠薬、抗精神病薬、抗てんかん薬)」のページでご説明いたします)。
 「抗うつ薬」(抗うつ剤)の働きをまとめると、次のようになります。

ball 抗うつ薬(抗うつ剤)の効果
うつ状態(抑うつ気分)の改善、気分の明朗化
精神力や意欲の亢進
焦り(焦慮)の鎮静化と不安感の軽減
 抗うつ薬(抗うつ剤)には、いろいろな種類があります。実際の治療では、医師がそれぞれの抗うつ薬の特徴を考え、患者との相性を見ながら、そのときどきで適切だと思われる量を処方していきます。
 また、処方される抗うつ薬(抗うつ剤)は、1種類だけとは限りません。複数の抗うつ薬(抗うつ剤)を同時に処方される場合もあります。

 抗うつ薬(抗うつ剤)は、脳細胞間の情報伝達手段である「神経伝達物質」のひとつ「モノアミン」の働きに作用します。
 たとえばうつ病では、モノアミンの一種、「セロトニン」「ノルアドレナリン」の働きが弱くなっていると考えられています。その働きを強化して、脳細胞間の情報伝達を正常化させる薬が抗うつ薬です。

ball 代表的な抗うつ薬(抗うつ剤)
第一世代
  三環系抗うつ薬
  イミプラミン(トフラニール、イミドール、クリテミン)
アミトリプチリン(トリプタノール、ラントロン、ノーマリン)
クロミプラミン(アナフラニール)
トリミプラミン(スルモンチール)
デシプラミン(パートフラン)
ノルトリプチリン(ノリトレン)
第二世代
  三環系抗うつ薬
  アモキサピン(アモキサン)
ロフェプラミン(アンプリット)
ドスレピン(プロチアデン)
四環系抗うつ薬
  マプロチリン(ルジオミール、クロンモリン、マプレス)
ミアンセリン(テトラミド)
セチプチリン(テシプール)
フェニルピペラジン系抗うつ薬(セロトニン2受容体拮抗薬)
  トラゾドン(レスリン、デジレル)
第三世代
  SSRI
  フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)
パロキセチン(パキシル)
第四世代
  SNRI
  ミルナシプラン(トレドミン)


ball 抗うつ薬の分類
 抗うつ薬の分類には、開発された年代によって、第一世代から第四世代(SSRIとSNRIをまとめて第三世代とする分け方もあります)と分ける方法があります。
 第一世代の「抗うつ薬」が開発されたのは、1950〜1960年代です。比較的効果は強いのですが、副作用が出やすい、効果が出るまでに時間がかかる、という欠点があります。

 その後の世代は、この欠点を少なくすることを主眼として、開発が進んできました。
 第一世代の抗うつ薬よりも、第二世代の抗うつ薬の方が、副作用や即効性の面で優れています。
 もっとも最近の「SSRI」(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)「SNRI」(選択的セロトニン・ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取り込み阻害薬)は、ほかの抗うつ薬と比べて、もっとも副作用が出にくい、という特徴があります。

 しかし、古い世代の抗うつ薬だからといって、現在使われていない、ということではありません。抗うつ薬には、それぞれの特徴があります。また、うつ病には、さまざまなタイプがあります。さらに、個人個人の体質との相性もあります。
 新しい世代の抗うつ薬で効果が得られない場合や、「激越型うつ病」などで症状が強い場合、古い世代の抗うつ薬が使われます。

 抗うつ薬には、化学的組成によって、「三環系抗うつ薬」「四環系抗うつ薬」「フェニルピペラジン系抗うつ薬」「SSRI、SNRI」という分け方があります。

 「三環系抗うつ薬」は、ベンゼン環が3つ含まれた化学構造を持っています。「四環系抗うつ薬」は、4つのベンゼン環が含まれます。「三環系」比べると、効果が早く副作用が出にくい、という特徴があります。
 「フェニルピペラジン系抗うつ薬」は、ベンゼン環が2つつながった構造を持つフェニルピペラジンを含む化合物です。「トラゾドン」がその代表です。
 「SSRI、SNRI」も、ベンゼン環を含む化合物ですが、その構造は、ほかの抗うつ薬よりもずっと複雑です。

ball 三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬の特徴と副作用
 「三環系抗うつ薬」は、古くから使われてきました。症状を改善する効果がもっとも強く、重度のうつ病、自殺の危険がある、という場合に、よく利用されます。
 しかし副作用も強く、身体の衰弱が激しい場合、高齢者に対しては、薬理的効果と副作用のバランスを充分考慮する必要があります。
 抗うつ作用よりも副作用の方が先に出るという欠点もあり、服用時には注意が必要です。
 「三環系抗うつ薬」でも、第二世代に属するものは、副作用が少なく、即効性の面でも優れています。

 副作用には、排尿困難便秘眠気かすみ目めまい血圧低下など、さまざまなものがあります。口が渇いて、嚥下障害(飲み込みづらいこと)が起ることもあります。心機能障害が起ることがあるので、心臓を含めた循環器に病気を持つ人は注意が必要です(必ず医師に伝えましょう)。

 これらの多くは、「三環系抗うつ薬」が持つ「抗コリン作用」によるものです。
 「抗コリン作用」というのは、重要な神経伝達物質の一つである「アセチルコリン」の作用を妨害する、という意味です。
 「アセチルコリン」は、神経と神経、神経と筋肉の情報伝達で使われています。この作用が妨害されるため、さまざまな神経や筋肉に関わる症状が出てくるわけです。

 ただし、「抗コリン作用」は、抗うつ薬特有の副作用というわけではありません。
 薬局でふつうに市販されているカゼ薬咳止め薬胃腸薬などの多くにも、「抗コリン作用」があります。
 何かの病気の治療中、医師から薬を処方されている場合、勝手に市販薬を飲んではいけないというのは、副作用を強めてしまう可能性があるからです。
 上記の症状のなかで、特に排尿困難や嚥下障害が起ったときは、そのままでは危険ですので、すぐに医師に知らせる必要があります。

 「錐体外路症状」という、運動機能に関する副作用があります(「錐体外路症状」につきましては、「薬物療法2(抗不安薬、睡眠薬、抗精神病薬、抗てんかん薬)」のページをご参照ください)。「抗精神病薬」の代表的な副作用ですが、「三環系抗うつ薬」でも起ることがあります。

 「抗ヒスタミン作用」という、どの「向精神薬」にもよく見られる副作用があります。具体的な症状は、眠気やだるさです。
 「三環系抗うつ薬」には、花粉症などの「アレルギー」を抑える薬「抗ヒスタミン薬」(抗ヒスタミン剤)と同様の作用もあるため、副作用が出るわけです。比較的よく起こる副作用です。

 「四環系抗うつ薬」は、三環系抗うつ薬よりも副作用が少なく、即効性の面でも優れています。体力が落ちている人や高齢者でも利用できます。
 特徴としては、不安や焦慮を鎮める効果が高いということがあげられます。症状の激しい「激越型うつ病」に適しています。また、「催眠効果」が強いので、不眠などの症状を緩和するためにも用いられます。
 副作用が少ないとは言っても、人によっては、三環系抗うつ薬と同様の副作用が出ることもあります。
 
ball フェニルピペラジン系抗うつ薬の特徴と副作用
 フェニルピペラジン系抗うつ薬は、SSRIと同じように、セロトニンの再取り込みを阻害する効果があります。また、強いセロトニン2受容体拮抗作用があるため、「セロトニン2受容体拮抗薬」とも呼ばれます。

 不安や焦慮を鎮める効果が強いので、主な症状が不安と焦慮という場合、適した薬となります。また、副作用としてちょっと強めの眠気(抗ヒスタミン作用)がありますが、この眠気をうまく利用して、睡眠薬を使わずに不眠症状を軽減することができます。
 三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬と比べると、副作用は穏やかで、ほとんどの場合眠気だけなので、かなり安心できる薬です。

 しかし、まれには、三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬と同様の副作用が出ることもあります。ほかの向精神薬との組み合わせによっては、危険度が高まります。
 副作用が強く出る場合には、やはり、すぐに医師と連絡を取らなくてはなりません。

ball SSRI、SNRIの特徴と副作用
 SSRIは、1980年代にアメリカで開発された抗うつ薬です。
 開発当初、うつ病の特効薬のようなイメージで、大々的に売り出されました。日本でも1999年に認可され、現在は、抗うつ薬の「第一選択薬」(特別な理由がない限り、一番最初に選ばれる薬)となっています。
 しかし、効果の面では、特効薬というほどではなく、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬と比べると、少し弱い程度です。

 その最大の特徴は、「副作用が出にくい」、ということにあります。うつ病患者にとって、つらい状態を治すのに、つらい副作用がある、さらには、効果よりも先に副作用が出る、というのは、とても大変なことです。
 最悪の場合には、「服薬拒否」にもつながりますし、効果が出る前に副作用に耐えられず服薬を中止してしまうといった、とてもやっかいな状態を防ぐこともできます。

 うつ病患者にとっての「QOL」(Quality of Life)の向上という意味でも、治療する医師が安心して処方できる、という意味でも、とても優れた薬だと言えるわけです。

 SNRIは、SSRIがセロトニンの再取り込みだけを阻害するのに対して、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の再取り込みも阻害します。
 その意味で、三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬の効果により近くなり、高い薬理効果が期待できる、と考えていいでしょう。
 実際、SSRIで効果が出なかったうつ病患者でも、SNRIに代えることで、効果が得られたという報告もあります。

 このように理想的なSSRI、SNRIですが、まったく副作用がないわけではありません。その主なものは、消化器症状(悪心、おう吐、食欲減退、食欲不振)不眠だるさです。性機能障害が起ることもあります。

ball SSRI、SNRIの優位性
 症状にもよりますが、多くの場合、うつ状態で医師の診察を受けると、第一選択薬であるSSRIが処方されることとなります。
 最初は少量が処方され、診察のたびに副作用や効果が確認され、徐々に増量されていきます。そうして、1ヶ月程度で、その人の必要量と思われる量まで増量され、そのまま同じ処方が続く、というのが定番となってきつつあります。

 SSRIは、副作用が少ないため、最近では、「パニック障害」「強迫性障害」「社会不安障害」「摂食障害」「PTSD」(外傷後ストレス障害)「月経前不快気分障害」などでも処方されるようになり、効果も確認されつつあります。
 ほとんど、心の病気の万能薬といった感じです。そのうちに、「抗うつ薬」という分類から、はずれるかもしれませんね。

 さて、SSRIやSNRIは、どうして、ほかの抗うつ薬と比べて、副作用が少ないのでしょう。これは、名前にもある通り、選択的にセロトニンやノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の再取り込みだけを阻害するからです。

 三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬も、セロトニンやノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の再取り込みを阻害して、脳内の絶対量を増やす作用は同じです。しかし、ほかの神経伝達物質にも、影響を与えてしまいます。
 それが、「抗コリン作用」「錐体外路症状」「抗ヒスタミン作用」として現れてくるわけです。

 その意味で、トラゾドンを代表とするフェニルピペラジン系抗うつ薬は、三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬よりも選択度が高く、ちょうどSSRIやSNRIとの中間の位置にある抗うつ薬ということになります。

ball 薬物療法の注意点
 ここまで、「抗うつ薬」を中心に、薬物療法について、さまざまな説明をしてきました。「抗うつ薬」について、ある程度のことがおわかりいただけたのではないかと思います。

 しかし、薬物療法を受けるに当たって、もっとも大切なことは、「医師の指示を守る」ということです。強い副作用が出たり、副作用がつらくて耐えられないと感じるときは、すぐに医師に連絡して、医師の指示を仰ぐことが必要です。

 ただし、薬の量が多すぎるとか、長く治療しても効果が感じられないなど、治療に対する疑問がぬぐえない場合には、ほかの医師に診てもらう、ということも考えておくべきです。
 医師も人間です。完璧な医師などいないはずです。セカンド・オピニオン(ほかの医師に相談して意見を聞くこと)で、症状が改善されることもあります。







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