How to overcome depression
ball 抗不安薬、睡眠薬、抗精神病薬、抗てんかん薬 ball



 このページでは、うつ病治療で使われる「向精神薬」のなかの「抗不安薬」「睡眠薬」「抗精神病薬」「抗てんかん薬」について、ご説明させていただきます(「向精神薬」の一般的な説明と「抗うつ薬」の説明につきましては、「薬物療法1(向精神薬、抗うつ薬・抗うつ剤)」のページをご参照ください)。
 うつ病の治療で中心的な役割を果たすのは、「抗うつ薬」ですが、すぐに効果が出ないという欠点があります。
 特に、不安や焦慮(焦りの気持ち)が強く出ていて、すぐに鎮静効果が必要な場合、不眠症状が強い場合、幻覚や錯乱などの精神病症状が出ている場合など、「抗うつ薬」と同時にほかの「向精神薬」が処方されます。

 また、「抗うつ薬」の効果が得られない「治療抵抗性うつ病」(難治性うつ病)の場合、副作用が強すぎて服薬の継続が難しい場合など、ほかの「向精神薬」が利用されることがあります。

 それでは、もっともよく使われる「抗不安薬」について、詳しく説明しましょう。

ball うつ病治療で使われる主な「抗不安薬」(マイナー・トランキライザー)
ジアゼパム (ホリゾン、セルシン)
クロキサゾラム (セパゾン)
メダゼパム (レスミット)
ブロマゼパム (レキソタン)
アルプラゾラム (コンスタン、ソラナックス)
クロチアゼパム (リーゼ)
エチゾラム (デパス)
ロフラゼプ酸エチル (メイラックス)
ロラゼパム (ワイパックス)

ball 「抗不安薬」(マイナー・トランキライザー)の特徴と副作用
 「抗不安薬」は、主に「全般性不安障害」(神経症)「パニック障害」などの治療に使われる薬です。不安や緊張を取り除き、精神を穏やかな状態に導く効果があります。「精神安定剤」とも呼ばれます。
 「抗精神病薬」(メジャー・トランキライザー)との対比として、「マイナー・トランキライザー」と呼ばれることもあります。

 「抗うつ薬」とのもっとも大きな違いは「即効性」です。たいていは、服用後30分から1時間程度で効果が現れます。
 「抗うつ薬」の場合、服用してから効果が現れるまでに、最短でも1週間程度はかかります。不安や焦慮が強く、すぐにでも落ち着かせたい場合など、「抗不安薬」の方が適しているわけですね(うつ症状が強い場合、即効性を高めるために「抗うつ薬」の点滴投与が行われる場合もあります)。

 現在使われている「抗不安薬」は、そのほとんどが、「ベンゾジアゼピン系」の化合物です。
 その最大の特徴は、「安全性」です。たとえば、「OD」(overdose、薬物乱用、薬物大量摂取)が起きても、すぐに生命に関わるようなことがなく、医師の処方どおりの服用なら、副作用もひどくはありません。

 「ベンゾジアゼピン系」化合物は、神経伝達物質のなかの「GABA」(ガンマ・アミノ酪酸)の働きを強化する作用があります。
 「GABA」の機能が落ちると、不安と関係するセロトニン系、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)系の神経活動の抑制がうまくできなくなります。つまり、「ベンゾジアゼピン系」化合物は、「GABA」の働きを強化することで、不安を鎮めるわけですね。

 副作用の主なものは、「抗ヒスタミン作用」としての、眠気とだるさです。自動車の運転をする人、足腰が弱っている高齢者の方は、注意が必要です。

 最近、「抗不安薬」で、よく話題になるのは、「依存性」「離脱症状」(禁断症状)です。しかし、医師の指示を守って服用している場合、ほぼ安全だと考えていいと思います。
 「依存性」は、「抗不安薬」自体の副作用というより、「精神的な依存」だと考えられます。また、そのような状態になってしまっている患者に、大量の処方を繰り返す医師に大きな問題があります。
 長期間にわたって、大量の「抗不安薬」を処方されているという場合には、一度ほかの医師に相談してみた方がいいでしょう。

 「離脱症状」(禁断症状)は、医師の指示どおり、服薬量を少しずつ減らすことで、ほぼ防ぐことが可能です。

 さて、次は、「睡眠薬」の説明に入りましょう。

ball うつ病治療で使われる主な「睡眠薬」
ゾルピデム(マイスリー)
ニトラゼパム(ネルボン、ベンザリン)
エスタゾラム(ユーロジン)
トリアゾラム(ハルシオン)
ブロチゾラム(レンドルミン)
ゾピクロン(アモバン)
フルニトラゼパム(サイレース)

ball 「睡眠薬」の特徴と副作用
 「睡眠薬」は、文字通り、睡眠を促す薬です。
 うつ病の代表的な症状に、「早朝覚醒」「中途覚醒」「入眠困難」などの「睡眠障害」があります(うつ病の症状につきましては、「うつ病の症状と経過」のページをご参照ください)。「睡眠障害」が長く続くと、苦痛が激しくなり、うつ病を悪化させる要因ともなります。
 この「睡眠障害」を治し、精神力の回復を促すために、「睡眠薬」が使われます。

 「睡眠薬」には、さまざまな種類があり、「早朝覚醒」、「中途覚醒」、「入眠困難」といったさまざまな症状に対応できるようになっています。
 たとえば、「入眠困難」に対応し、入眠時だけに効果が出る「短時間作用型」、「中途覚醒」に対応する「中時間作用型」、「早朝覚醒」に対応する「長時間作用型」などがあります。
 また、効果が強いものから弱いものまで、さまざまな種類があり、それぞれの「睡眠薬」の処方量によっても調整ができます。

 どの薬を使うかは、「睡眠障害」の症状などから、医師と相談の上、決めていくことが必要です。「抗うつ薬」や「抗不安薬」も服用している場合、それらの副作用としての眠気もあるため、ほかの薬との組み合わせも重要な決定要素となります。

 最近使われている「睡眠薬」は、「抗不安薬」と同様、ほとんどが「ベンゾジアゼピン系」化合物です(すぐ上の「抗不安薬」の説明をご参照ください)。安全で、安心して飲める薬となっています。
 以前は、自殺企図というと、「睡眠薬の大量服用」が、かなりの割合を占めていました。しかし、「ベンゾジアゼピン系」化合物が主流となってからは、生命に危険が及ぶことがほぼなくなりました。

 安全になった「睡眠薬」ですが、やはり長期にわたる服用は、精神的依存にもつながりますので、好ましいこととは言えません。
 症状が治まってきたら、医師と相談しながら、必要なときだけ服用する、処方量を少しずつ減らしていくなど、いつかは服用を中止するということを、考えておくべきでしょう。

 それでは次に、「抗精神病薬」の説明に移りましょう。

ball うつ病治療で使われる主な「抗精神病薬」(メジャー・トランキライザー)
定型抗精神病薬
  スルピリド(ドグマチール、アビリット、ミラドール)
  クロルプロマジン(コントミン、ウインタミン)
  レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)
  ペルフェナジン(PZC、トリオミン)
  ハロペリドール(セレネース、リントン)
  カルピプラミン(デフェクトン)
非定型抗精神病薬
  リスペリドン(リスパダール)
  ペロスピロン(ルーラン)
  クエチアピン(セロクエル)

ball 「抗精神病薬」の特徴と副作用
 「抗精神病薬」というのは、主に「統合失調症」の治療で使われる薬です。
 代表的なものに、古くからある「定型抗精神病薬」と、新しい薬である「非定型抗精神病薬」があります。新しい薬の方が「錐体外路症状」などの副作用が少なく、「統合失調症」の「陰性症状」にも効果があるといわれています。

 ここで少し、「統合失調症」の症状について、ご説明しましょう。
 統合失調症には、「陽性症状」「陰性症状」があります。
 「陽性症状」というのは、多くの人が知っている症状で、幻視や幻聴などの「幻覚」、「妄想」、「焦燥感」、「精神運動興奮」(激しい興奮)、「奇異な行動」、「支離滅裂な思考や返答」などのことです。
 「陰性症状」というのは、「自閉」、「意欲の低下」、「情動の平板化」、「感情鈍麻」、「思考の貧困」、「緘黙」(話をしなくなること)、「意欲と発動性の欠如」、「注意力障害」(集中力低下)、「快感消失」などの症状です。

 古い「定型抗精神病薬」では、「陰性症状」に対して、ほとんど効果が得られませんでした。新しくできた「非定型抗精神病薬」は、「陰性症状」にも効果が得られ、統合失調症に苦しむ患者さんの「QOL」(Quality of Life)の向上にも役立っています。

 統合失調症の治療と比べて、うつ病の治療では、少量が処方されます。
 もっともポピュラーな「スルピリド」(ドグマチール、アビリット、ミラドール)では、統合失調症に対しては300〜600ミリグラム、うつ病に対しては150〜300ミリグラム程度が処方されます。

 余談ですが、スルピリドは、もともと胃潰瘍の薬として開発されました。しかし、抑うつなどの精神症状の改善に優れ、副作用もそんなに強くないことから、さまざまな心の病気で利用されるようになりました。
 ただし、食欲増進作用による「体重増加」「高プロラクチン血症」(男性の場合は女性化乳房、女性では乳汁分泌・無月経)などの副作用が起こることがあります。

 「抗精神病薬」は、セロトニンやノルアドレナリンと同じ神経伝達物質の1つ「ドーパミン」の働きを抑えるように作用します。
 統合失調症では、「ドーパミン」の働きが通常より強くなっているため、「抗精神病薬」でその働きを抑えることで、ふつうの状態に戻ると考えられています。

 うつ病の治療で処方されるのは、幻覚や幻聴などの「精神病症状」(統合失調症症状)が強く出ていたり、「焦慮」(焦りの気持ち)が強く出ていて、精神の鎮静化が必要だと考えられるときです。

ball 錐体外路症状
 「抗精神病薬」の副作用として、代表的なものに「錐体外路症状」があります。
 ちょっと詳しく説明しましょう。
 脳の一部である延髄には、「錐体路」という、脳から各筋肉まで通じる、運動神経への命令の通り道があります。ここに障害が起きると「運動麻痺」となります。
 「錐体外路」は、錐体路以外の、運動神経への命令の通り道で、無意識的に運動をスムーズにする命令が伝わっています。この機能が障害を受けると、スムーズな運動ができなくなります

 代表的な症状は、「パーキンソン症状」(手が震えたり、歩く姿勢が不安定になったり、ヨチヨチ歩きになったりすることで、パーキンソン病の症状と同様)、「ジストニア」(目が発作的に上を向く・ろれつがまわらない)、「アカシジア」(手や足がむずむずする、落ち着かず、じっとしていられない、無意味に歩き回る、焦燥感がある)、「遅発性ジスキネジア」(しばらく服用を続けると現れる症状で、口をもぐもぐさせる、舌が動く、指の曲げ伸ばしを繰り返す、腕をねじる、体をくねらせる)などです。

 ほかの向精神薬と同様、「抗コリン作用」「抗ヒスタミン作用」(この2つの副作用に関しましては、「薬物療法1(向精神薬、抗うつ薬・抗うつ剤)」のページをご参照ください)、「スルピリド」のところで説明した「高プロラクチン血症」などの副作用が起こることもあります。
 特に「定型抗精神病薬」は副作用が強く出る場合が多くなります。しかし、うつ病の場合、処方量が少ないので、その分副作用も少なくなります。

 最後に、「抗てんかん薬」の説明をしましょう。

ball うつ病治療で使われる主な「抗てんかん薬」
カルバマゼピン(テグレトール)
バルプロ酸ナトリウム(デパケン)

ball 「抗てんかん薬」の特徴と副作用
 「抗てんかん薬」は、当然のことながら、「てんかん」の治療に使われる薬です。
 「てんかん」は、脳細胞が突然異常興奮し、その興奮のせいで通常の脳機能が傷害される病気です。具体的な症状としては、突然発作的に気を失って倒れる、手や足がけいれんする、からだが突っぱる、錯視や錯覚が起こる、無反応になる、意識がぼんやりする、などがあります。

 しかし、子供に起こる一過性の熱性けいれんや、アルコールや薬物などの影響で一時的に起こるけいれんなどは、「てんかん」ではありません。
 けいれんなどの症状が繰り返し起こる場合、「てんかん」の疑いが持たれ、脳波検査やCT、MRIなどで特徴的所見が見られると、「てんかん」と診断されます。
 原因として、先天的な脳形成異常、頭部外傷による脳障害、髄膜炎などの脳に関する感染症による脳障害などがあげられます。原因不明の場合もあります。

 「抗てんかん薬」の作用は、ほかの神経細胞の興奮を抑える「抑制性GABA神経細胞」の働きを強める、ということです。この作用により、神経細胞の異常興奮を抑え、てんかん発作を防ぐ、というわけです。

 うつ病の治療では、強い焦慮や突発的な情動を抑えて、精神を鎮静化させるために利用されることがあります。「治療抵抗性うつ病」(難治性うつ病)で、抗うつ薬の効果が出ない場合にも、利用されることがあります。

 副作用として、「抗ヒスタミン作用」(眠気、だるさ)や「消化器症状」(悪心、おう吐、食欲減退、食欲不振)、「薬疹」(薬が原因となるアレルギー性発疹)、「薬剤性過敏症症候群」(薬とある種のウイルス感染が関係していると考えられる発疹)、「肝機能障害」などが起こることがあります。
 また、「抗てんかん薬」には、「催奇形性」が確認されていて、子供が欲しいと考えいる人や妊婦さんは使用できません。
 まれには「抗精神病薬」と同様の「錐体外路症状」が起こることもあります。

 ここまで、うつ病の治療で利用される「抗不安薬」、「睡眠薬」、「抗精神病薬」、「抗てんかん薬」について、説明してきました。
 うつ病では、「抗うつ薬」が治療の中心ですが、うつ病の多様な症状に対応するために、ほかの「向精神薬」を補助的に利用することで、より治療が容易になります。

ball 気をつけなくてはならない副作用
 「向精神薬」は、少し前の時代と比べて、飛躍的に安全性が高まっています。しかし、副作用は、なくなったわけではありません。依存性や離脱症状(禁断症状)の問題もあります。
 服用に当たっては、医師の指示を守ることがとても重要です。
 副作用に関しても、耐えられないと感じたり、苦痛が激しかったり、不可解な点がある場合には、どんどん医師と相談すべきです。

 めったに起こりませんが、服用中、急に呼吸や脈が速くなったり、全身が硬直したり、高熱が出たり、原因不明の発疹が出たりした場合は、すぐに医師と連絡を取ることが必要です。もっとも重い副作用である「悪性症候群」「スチーブンス・ジョンソン症候群」(SJS)や「中毒性表皮壊死融解症」(TEN)などの「重症薬疹」の疑いがあるからです。
 もしそうだった場合には、すぐに適切な処置が必要となります。

 「悪性症候群」は「抗精神病薬」や「三環系抗うつ薬」、「重症薬疹」は抗てんかん薬の服用で起きやすくなるので注意が必要です。






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